あるベテランのヘルパーさんが仰っていました。
「最初は、ご利用者に『ありがとう』『また来てね』と言ってもらうことが、嬉しかったです。
でも、この仕事を続けていくにつれ、単純にそれだけではなく、ご利用者から多くのことを教えていただき、学ばせていただく仕事だと気づきました。こちらが、『ありがとうございます』という気持ちになる素晴らしい仕事です。」
そんなヘルパーさんが、ケアに入る度に多くのエピソードが生まれます。そのほんの一部をご紹介します。
エピソード① 「やってみよう」を生み出すケア
リウマチにかかった奥様に代わり、ご主人が調理をされていましたが、奥様は食事に偏りがあり、少しでも味が濃かったり、食材が硬いと食べないと、悩んでおられました。そんな折、ご主人ご自身も膀胱全摘出になり、色んなことが億劫になっていた、と仰っておられました。
お悩みを聞いたヘルパーが、「旬の食材を使ったり、切り方、盛り付けを工夫することで、栄養を取るだけでなく、心の潤いにもなりますよ」と食事の大切さをお伝えしつつ、ご主人に少ない手順でできる茶碗蒸しを提案しました。「こんなに簡単にできて、失敗しない茶碗蒸しは初めてだ」と仰っていただき、それ以降は、ヘルパーが来ない日も、具材を変え、ご自分で何度もお作りになられていました。食が細かった奥様も、「美味しい」と召し上がっていただけたようです。次回ヘルパーが訪問した際には、「妻がお代わりをしてくれた」ととても喜んでくださいました。
今では、楽しみながら奥様のためにと、様々なレパートリーに挑戦されつつ、ヘルパーの訪問を楽しみにしてくださっています。
エピソード② その方らしく、住み慣れた地域で
認知症になられた、お一人でお住まいのご利用者のお宅にケアに入らせていただきました。
徐々に認知症が進行されて、外出された折に、お一人で家まで戻って来られないということが増えてきました。
やはり、ご利用者は「住み慣れたご自宅で暮らしたい」との思いを持っておられ、その方が住み慣れた地域で暮らしていくにはどうしたら良いか、ケアマネジャーや、民生委員さん、自治会の皆さんと一緒に考えました。やはり、皆で考えると知恵が出ます。その方のお写真を良く行かれるお店にお渡しし、ご利用者がお店を出たら右に歩いてもらうよう、お伝えいただくようにお願いしました。ヘルパーは一人でご利用者のケアをしているように見えますが、そうじゃないんだと改めて実感しました。
ヘルパーはご利用者の一番近いところで、ご利用者のご様子を感じられる存在です。その私が発信し、皆でその方の生活を支えていくとこで、住み慣れた地域で穏やかに暮らしていただける。そのことに、大きなやりがいを感じています。