ノーリフティングへの取り組み

この仕事は、長く続けるほど、奥深さ、面白さを知っていく仕事だと思っています。
私たちを仲間として選んでくれたあなたに、長く続けてほしい。腰痛でリタイアなんて、悲しいことは起こしたくない。
そのために、私たちはノーリフティング宣言を掲げ、スタッフ・ご利用者ともに笑顔になれるケアを進めています。

ノーリフティングケアとは

スタッフ・ご利用者双方にとって、安全で安心な、
「持ち上げない」、「抱え上げない」、「力づくで行わない」ケア
のことです。
腰痛を引き起こす間違った身体の使い方をなくし、ご利用者の状況に合わせて福祉用具などを活用します。
経験者の方で、当社で初めてノーリフティングケアを行った方が、「腰への負担が全然違う!」と驚かれることもしばしばです。

ノーリフティングケアの例

ボードを使って、スムーズに移乗(約4秒)

リフトを使って、抱え上げずに移乗(約8秒)

スタッフの声

ノーリフティングケアの3つのメリット

① 腰痛を防ぎ、長く働ける

腰痛は、介護という仕事の職業病ではあってはならないと思っています。
正しい姿勢で、必要に応じ適切な福祉用具を活用すれば、予防することができます。
例えば、ベッドから車椅子への移乗。力ずくで抱え上げれば、腰痛を引き起こす危険性が高いです。
しかし、スライディングボードを使い、滑らせるように移乗すれば、腰への負担を大きく減らすことができます。

福祉用具を使わないケアでも

ノーリフティングケアというと、重度の方だけ、福祉用具の活用だけ、というイメージを持たれることも多いのですが、軽度の方、福祉用具を使用しない場面でも有効な考え方です。

例えば、立ち上がりの介助の時、少しのサポートで動ける方に対しては、その方の身体の動きに沿ったケア方法を考え、双方に負担がかかりにくいケアを行います。
写真では、人が立ち上がる時の自然な動き(体重を足に移して、前傾になる)に添って介助を行っています。

② 新人でも、短期間で安全な介護ができる

入職時の研修で、身体の動きの基本を学ぶ1日と福祉用具の活用を学ぶ1日、合計2日でノーリフティングの考え方、基本をお伝えしています。概ね4~5人の少人数制で実施しており、スタッフ役、ご利用者役を交代して行いますので理解も深まります。
また、実際のご利用者への実践では、理学療法士や作業療法士、フロアの先輩が自信をもって出来るようになるまでサポートします。始めてノーリフティングケアに触れたという方でも、4~5回実践すると、自信を持ってケアを行えると仰っていただけます(職員アンケートより)。

③ ご利用者の笑顔が増える

人の力で無理やり抱え上げる力任せの介護を減らすことで、ご利用者も抱え上げられていた時に生じていた痛みや恐怖が大きく軽減されます。
そのため、精神的に落ち着かれ、身体の強張りがなくなることで、関節の固さが緩み、姿勢が良くなるといった変化も見られます。当社のホームのご入所者も、ノーリフティングケアを進めることで、車いすに座れるようになり、食事がとれるようになった方もいらっしゃいます。また、抱え上げるケアの時にはスタッフに身体を預けていたご利用者も、福祉用具を活用することで、自ら足を踏ん張ったり、前に屈んだりと、自分の残っている能力を活用することができ、日常生活の中でリハビリ効果につながります。

ノーリフティングケアの事例

移乗ボードで安心のケアを

脳梗塞の後遺症で右片麻痺と失語症があるO様の場合、以前の施設ではベットと車椅子の乗り移りはスタッフに抱え上げられていました。でもこれでは麻痺側の上下肢に過剰な力が入りO様にもスタッフにも負担が多いと考え、移乗ボードを使うことにしました。
O様にとって移乗ボードは初めて見る用具ですから、不安や戸惑いがあるのは当然のこと。そこで私たちはO様が安心して乗り移りできるように毎日毎日手順を声に出して説明しながらゆっくりと介助することを徹底しました。
そうして毎日使っていくうちに、O様も移乗ボードを使うと楽に乗り移ることが出来ると認識され、今では安心して体をゆだねてくださっています。さらに新しいスタッフが来た時には、自らスタッフにボードの使用方法を伝えようとしてくださってます。